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#29 「月は見ている」



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イーサン:
「この時間にどうした。
そんなに外の景色が珍しいのか?
何を眺めている?」

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コーデリア:
「月よ」

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「月って何て綺麗なのかしら……。今まで見過ごしがちだったけれど……。
私たちを見てくれている気がするわ」

イーサン:
「…………」

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コーデリア:
「あの輝きがもしも偽りだったとしたら……」

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「…………」

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「あのラストシーン。私、本当に自分の力で弾いたのかしら。
あなた何かした?」

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イーサン:
「何も。昔ピアノを弾いた経験があったはずだ」

コーデリア:
「遠い昔のことよ。ずっと弾いていなかった。だから練習したわ。
でもあそこまで演奏できるなんて思いもしなかった。考えられない。
音だけはプロのピアニストの演奏に差し替わるはずだったのに」

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「まるで何かに導かれているように勝手に指が動いてる感覚。
あなたが助けてくれたかと思ったけれど……」

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――皆さん、おはようございます。トム・ビートンです。清々しい朝ですね。
サン・マイシューノからお届けしています。……


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本日は最高のゲストをお招きしています。
……クリス・ヨハンソン!……やあクリス。会えて嬉しいよ!
この番組やってて良かった!司会者冥利に尽きるよ!


やあトム。僕も会えて嬉しいよ。この番組に出るのが夢だったんだ。……

今回の新作映画はコーデリア・アレンとの共演が大きな話題を呼んでいるよね。
アーサー・ベラミーが婚約したのとどっちが大ニュースだと思う?


ハハハ。両方かな。皆に観てもらえる日が楽しみだよ。
ベラミー家の方々も是非……


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じゃあクリス。まず気になる最初の質問だけど…………

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ノエル:
「入ってた?」

メアリー:
「はいってない……」

ノエル:
「そうかあ。明日になったら来るかもしれないな」

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メアリー:
「おねえちゃんのすきなおはな、たくさん、たくさん、いれたのに……。
めありのこと、きらいになったのかなあ?」

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ノエル:
「そんなことあるもんか。お姉ちゃんはメアリーのことが大好きですって、
いつも手紙に書いてあったじゃないか」

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メアリー:
「じゃあまた、おてがみくれる?」

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ノエル:
「ああ。だってお姉ちゃんはメアリーの人魚姫なんだから。
さあ早く支度しよう。でないと学校に遅れるぞ」

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ウィロー・クリーク
ブルック・バンガロー

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「ねえ君、もうそろそろ来ちゃうんだろ。アーサー君たち」

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「ええ!」

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「まだ弾幕張り終わってないんだけどな」

「ええ!」

「ああ、駄目だ。緊張する」

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「ええ!」

「あのね……そんなに気合入れてどうす……」

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「ちょっと今話しかけないで。私は今、真剣なの」

「ふ、普通で良いんじゃないか……」

ブリジット:
お父さーん!

「!き、来た!君、来たよ!」

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アーサー:
「あ、あの、初めまして……。既に家の者がお伺いしているかと思いますが、
僕からのご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません。
アーサー・ベラミーです」

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……そう。婚約してから、この日俺はブリジットの実家へ遅すぎる挨拶に行った。
あらかじめ自身の円卓の騎士を引き連れた父さんたちが顔を出していたものの、
それは相手に有無を言わせぬ『挨拶』……。
ブリジットを公然とさらって行くと宣言するようなものだった。

君から必要ないとは言われたものの、どうしてもスーツを着ていくと決めた。
先にジェイコブから、相手の両親への挨拶は『超緊張する』と聞かされていたけど、
その通りだった


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ブリジットの実家、エヴァンス家はウィロー・クリークを流れる川沿いにあって、
すぐ傍には美しい桜並木の小道が通る。
春の匂いがするというのに、俺だけが真夏にいるかのように、汗がどっと噴き出した


「(ごくっ……)
と、とんでもありません。そ、その、あの、アレ……。
ブ、ブ、ブリジットの……ちっ、父です」

「ブリジットの母で~す!エヴァンス家へようこそ~。
うふふ、間近で見ると本当に素敵なのねえ」

アーサー:
「は、初めまして」

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「もう、や~だ!そんなに硬くならないで。アーサー君ったら!うふ!」

「君……年齢を考えないと……」

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ブリジット:
「アーサー。今飲み物用意するから適当にゆっくりしててね」

アーサー:
「そうさせてもらいます……」

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「(ここがブリジットの生まれ育った家なのか……)」

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「(絨毯がもこもこして、踏み心地が良い)」

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「(あ、これは『高山の平和』だ。この写真、俺も好きだ)」

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「(シャンデリアのチョイスが素敵だな、ミッション様式のインテリアか……)」

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「(綺麗な花だなあ。手入れが行き届いてる。
ちょっと伸びをすると、デイジーが見える。まるでこちらに手を振って挨拶しているみたいだ。
計算されているのかな)」

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「(な、何を見ているんだろう……。
昨日誤って絨毯に落としてしまったマッシュポテトがまだ残っていたというのか……。
いや、アレは確実に綺麗にふき取ったはずだし……。
それともうちの紅茶がお気に召さなかったのか……。
奮発して高い茶葉をチョイスしたつもりだったのだがベラミー家じゃまだまだであったか……?
アーサー君、どうか分かってくれ。これが庶民の出せる最大限の力なんだ。
ん……?
あ、しまったァァマグカップで紅茶を出してしまったァァァ!これかァァァ!!
これのことかァァァ!ついうっかり『エヴァンス家ルール』が顔を出してしまったッ!
)」

アーサー:
「ガーデニングがお好きなんですか?」

「え?え、あ、ま、まあ。そうですねえ」

アーサー:
「すごく綺麗ですね」

「どっ、どうもありがとうございます」

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「もう。これから私たち家族になるんだからそんな他人行儀でどうするのよ。
ねっアーサー君」

アーサー:
「あっ……はい」

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「今日はうちに泊まっていくの?」

アーサー:
「!」

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ブリジット:
「ううん。これからアーサーの家に行くの。アーサーが見せたいものがあるって。
ね、アーサー」

アーサー:
「あ、ああ」

「あら、そうなの?……ブリジット、まさかその恰好で行くって言うんじゃないでしょうね?」

ブリジット:
「私は着替えたいんだけど、アーサーが着替えなくて良いっていうの」

「失礼よ」

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アーサー:
「いえ、そんなことありません。
案内するのはうちの地下室ですので、ドレスアップは逆に汚れてしま……」

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「……」

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アーサー:
「(しまった。何か変なこと言ったかな……)
あ、あの、挙式前までには必ずお見せすることになっておりまして。
家の者からもお話があったと思いますが、本来であればもっと早くお話するべきでした。
申し訳ありません」

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「良いのよ。気にしないでね。
来てくれた。……それだけで十分なんだから」

アーサー:
「…………」

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「それはそうと、ブリジットばっかりアーサー君独り占めじゃない。
分かってると思うけど、この子、超お転婆だから宜しくねえ、アーサー君。
もうお母さん、アーサー君のお家の大切な壺とか割っちゃわないか心配。
ブリジット。一応警察官だし、花嫁なんだからしばらくは大人しくしてなさい。
じゃないとお父さんがバージンロード行きじゃなくてあの世行きになるわよ。
飛び蹴り禁止」

ブリジット:
「もう!お母さん!そんなことしないってば!」

「どうだかなあ~?分からぬぞ~」

ブリジット:
「お、お父さんまで!」

アーサー:
「ハハハ」

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「ごちそうさまでした。あ、このコップはどちらへ……」

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「ああ!そ、そんなこと良いですって!な、なあ君!」

「そうよう、アーサー君良いのよう、片付けるわよ。良いからもうちょっとゆっくりしていって。
まだ時間あるでしょ?」

アーサー:
「え、でも」

ブリジット:
「お母さん、アーサーのコップを洗いたいみたい。
だから、置きっぱなしで良いよ」

「うふっ。そうよ。とびっきり天使で素敵な竜のお子様が飲んだコップとして家宝にするわ。
洗いたくないぐらい」

アーサー:
「???」

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ブリジット:
「ねえ、アーサー。そんなことより、こっちこっち!」

アーサー:
「ん?」

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ブリジット:
「ここが私の部屋」

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アーサー:
「失礼しま……、あ、何だろう、良い香りがする」

ブリジット:
「自分でブレンドしたアロマを置いてたんだけど、部屋に染み付いてるのかもね。
私は鼻が慣れちゃったせいか、あまり感じないんだ」

アーサー:
「ブリジット、アロマ大好きだもんな。俺も好きだ。
でも何が良いのか選ぶのに困るんだ」

ブリジット:
「お薦めはラベンダーとフランキンセンスの組み合わせ。瞑想に使えるよ。
他にはヨガにもぴったりだよね。そうだ、あれからヨガは続けてる?」

アーサー:
「何とか。相変わらず身体は硬いままだけどな」

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ブリジット:
「そっか。ふふ、これからはお家で2人ヨガ教室開けるね!
それから、『家族』揃ってヨガできる日。待ち遠しいな。私とアーサーと、おチビちゃんとでね」

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アーサー:
「ああ。そうだな。ブリジットがインストラクターで……ん?」

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「(……あの手紙は)」

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ブリジット:
「このヴァイオリン!そうそう。いつも弾いてたなあ。ふふ、ギイギイ弾いてた頃が懐かしい」

アーサー:
「……ヴァイオリンはお父さんに教えてもらったって言ってたよな」

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ブリジット:
「うん。私のお父さん、プロのヴァイオリニストになるのが夢だったんだって。
だけど音楽はお金がかかるってやめちゃったみたい。
でもやっぱり諦めきれなくて、私が子どもの頃から熱心に教えてくれたんだけど、
私は警察官になるのが夢だったから、お父さんの夢は叶えられなかった。
中学に上がってからかな。いつの間にか弾かなくなっちゃった。
それこそ、ヨガやボクシング、瞑想に夢中になってね。あと欠かせないスイミング。
皆でキャンプに行った時に弾いたけど、本当に久しぶりに弾いたのよ」

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アーサー:
「ずっと弾いてなかったにしては、すごく上手だった」

ブリジット:
「ありがとう。でもこういうのって続けてないと駄目だね。下手っぴになってたもん。
また始めようかなあ」

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「あ~ら、100万年ぶりに聴く音色。
…………。ブリジット、上手になったわね」

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ブリジット:
「ね、緊張するだけ損だったでしょ」

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アーサー:
「でも練習通り言えなかったよ」

ブリジット:
「何、練習って?」

アーサー:
「あ、いや。それにしても君ってやっぱり小さい頃からお転婆だったんだな。
絵本をブーメランとして使っていた話は面白かった」

ブリジット:
「バレちゃったものはしょうがないなあ。うふふ。
そうなの。私が小さい頃読んでいた絵本で『無事』でいられたものって一冊もないの」

アーサー:
「アレ?ブリジットって本を読むの好きだろ。いつからブーメランとして使わなくなったんだ?」

ブリジット:
「うーん。飛び道具として使わなくなったのは小学校に上がったぐらいかな。
読んだ方が面白いって気付いたの」

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アーサー:
「フッ……ハハハ。ブリジットらしい」

ブリジット:
「あ、もう!アーサーまで!」

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「――ブリジットが結婚するなんて僕には夢のようなんだが……。
それがまさか本当にアーサー君が相手になるだなんて思っていなかったよ。
まだ信じられない」

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「あら、そう?私はこうなるって思ってたし、全然驚いていないわ。
まだ反対してるの?」

「本当のこと言うとね。
だって一般家庭の、それもよりによってうちのブリジットがベラミー家に嫁ぐなんて、
無茶苦茶な話じゃないか。
僕はご当主と奥様の顔、それにお付きの人たち。
恐ろしくて直視できなかったよ……」

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「新聞なんかでしか見たことなかったけど、とっても気さくで良い方たちだったじゃない。
私は何にも心配してない。それに、アーサー君を見たら、どう?
反対する気なんて吹っ飛んじゃったんじゃない?」

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「アーサー君がいくら良くっても、結婚って結局家同士のものだろ。
僕はそれを……」

「あーあ。ブリジットが羨ましい。私があと30歳若かったらなあ」

「…………」

「冗談よぅ。あなたと結婚して良かったと思ってるから安心なさい。
私、ブリジットにもこういう気持ちをさせてあげたいの。あなたは?」

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「そんなの決まってるだろ。ブリジットの幸せを願うこと。それが一番なんだって。
アーサー君ならブリジットを幸せにしてくれるって分かってるし、
ブリジットだからこそ、うまくいくだろうとも思うよ。
けど、けどさ……」

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「父親であるがゆえの心配ね。分かるわよ。
でも、お互いがお互いを選んだの。こうなったのも運命。
すべては神様の思し召しよ」

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オアシス・スプリングス
リオ・ヴェルデ

ブリジット:
「ふう、着いた!いつ見ても立派だね。アーサーの家」

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アーサー:
「……ごほん。古いだけだろ?」

ブリジット:
「ううん、そんなことない。とっても素敵よ。私大好き。
そんな素敵な家にいつもの格好で入るってどうかな。
やっぱり着替えたい」

アーサー:
「だからブリジット、今から案内する場所はドレスで入るようなところじゃないよ。
そのままで十分だ。それに、今日は父さんも母さんもいない。
……。よし。……ふう、おほん。よしっ、行こう。ブリジット」

ブリジット:
「アーサー、大丈夫?」

アーサー:
「え、な、何が?」

ブリジット:
「だって、何か緊張してない?」

アーサー:
「し、してないよ。んん、ん、ん。ちょっと喉の調子が」

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ブリジット:
「もしかして……」

アーサー:
「も、もしかしない」

ブリジット:
「怖いなら怖いって言ってね」

アーサー:
「……すっ……」

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「……少しだけ怖いところ、ではあります。はい……」

ブリジット:
「わあ、本当!?アーサー大好き!」

アーサー:
「(テンション上がってもらっても困る……)」

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ブリジット:
「ここが地下室への階段ね?」

アーサー:
「ああ」

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ブリジット:
「実は最初にお邪魔した時からずっと気になっていたの。
お義父様から少しだけお話されただけだったから、何があるのかわくわくする!」

アーサー:
「……これだけは習わしに従うことにしたんだ。ただ、君が期待しているようなものはな……」

ブリジット:
「良いから良いから!早く入ろう!」

アーサー:
「え、あの、ちょっと。そんな、いきなり?
まあ、父さんが帰ってこないうちに入っておいた方が良いかもしれな……」

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アンソニー:
「盛り上がっているところ悪いが、私ならここにいるぞ」

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アーサー:
「!!!!????」

ブリジット:
「お義父様!お会いできて嬉しいです!」

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アンソニー:
「私もだ、ブリジット。フォン・ホーント・エステートの件は残念だったが、
今度こそは期待して良いぞ」

アーサー:
「(この人はまた適当なことを……)」

ブリジット:
「ゴーストがいるのですか?」

アーサー:
「……」

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アンソニー:
「ハハハ。こう言っては我らが神にとんだ失礼だな。今のは冗談だ。
ここの地下は神殿になっている。ブリジットにも知っておいてもらいたいのだ。
ベラミー家の者として、必ずな」

ブリジット:
「地下神殿……!?じゃあ、怖いところではないですね?」

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アンソニー:
「ああ。この地下室なくしてベラミー家は語れんぞ。
私たちにとってはとても大切で、神聖な場所だ。
上の建物は一度修復作業をしているが、地下の部屋は15世紀の姿そのままだ」

ブリジット:
「それじゃ、今から大体600年前のものがこの地下に……。
とても歴史のある神殿なんですね!」

アンソニー:
「ああ。じっくり堪能しなさい。一般には一切公開していないからな。
全く、素晴らしい神殿だというのに、アーサーは雰囲気で怖がっている。
今日だって私に隠れて案内しようとしているのだろう?」

アーサー:
「(うう……)」

アンソニー:
「勇敢な竜の子のはずが、仕様のない奴だ。
ブリジット、こんなアーサーだが、宜しく頼むぞ」

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ブリジット:
「ふふ、はい。じゃあ、連れて行って、アーサー……って、
アーサー!あなた、手冷たい!」

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アーサー:
「あのー……」

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「……少しだけ待ってもらえますか。心の準備をしてから……」

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アンソニー&ブリジット:
「……………………」

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アーサー:
「え、な、何でそんな怖い顔してるんですか……嫌だな、ハ、ハハ……」

アンソニー:
「早く行きなさい」

アーサー:
「は、はい」

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ブリジット:
「うわあ……急に空気が変わったね。
ひんやりしているような、生暖かいような。不思議な空間ね」

アーサー:
「……」

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ブリジット:
「大丈夫、2人でいるんだもん。怖くないでしょ?」

アーサー:
「俺の手、まだ冷たいだろ」

ブリジット:
「ふふふふふっ!アーサー、可愛い!」

アーサー:
「か、可愛い!?」

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ブリジット:
「ふふ、だって。じゃあ、手を繋いでいく?」

アーサー:
「…………」

ブリジット:
「ごめんごめん、冗談だよ。怖いものは、怖いよね。
肩の力を抜いて、リラックス、リラックス」

アーサー:
「リラックス……リラックス……!(必死)」

ブリジット:
「ね、アーサー。神様はアーサーにとってどんな存在なの?
怖い存在?」

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アーサー:
「怖くはない」

ブリジット:
「うん。じゃあ、大丈夫だよね」

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「ここは……?騎士の銅像が2,4,6,8……。全部で12体。
もしかして、ここは円卓の騎士の部屋?」

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アーサー:
「ああ。その通りだ。ここは『騎士の間』って呼ばれてる」

ブリジット:
「神殿に銅像が置かれてるってことは、少なくとも15世紀から存在していたんだね。
大事な存在だったんだ」

アーサー:
「切っても切り離せない存在だからな。
とは言え、俺たちもいつ彼らが誕生したか、はっきりとは分からないんだ。
古代と言われているけど、文献の紛失とか、文字の判読ができないとかで
謎に包まれたままだ。
おかげで歴史学者が好んで研究のテーマにしてる」

ブリジット:
「そうだね、私の行った大学にも円卓の騎士がテーマの論文発表や、
研究するソサエティがあったよ。
学校の廊下を歩いてると、教室から神話をそらんじる声がよく聞こえてきた」

アーサー:
「――王の周りを囲み護る者たち、12人。
12人、王誕生し、没するまで王がためその身を賭す。
王にすべて捧げたのち、安息の地へ向かう。
王に赤子生まれれば、再び12人、円卓を取り囲む――」

ブリジット:
「そう、それそれ。安息の地って何のこと?」

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アーサー:
「安息の地というのは、死後の世界のことだ。
円卓の騎士は一般市民に紛れて生活する。いや、生活する「ふり」をする。
彼らは俺のために一切友達を作らず、結婚もしない。
人生、ありとあらゆるもの、すべてを犠牲にして、王を護るため「だけ」に生まれてきた者たち。
そういう彼らが息つく場所は……」

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ブリジット:
「……悲しい話」

アーサー:
「結婚式の前にこんなことは話したくなかった。ごめん」

ブリジット:
「ううん。話してくれてありがとう。
……実際の姿を見た人は聞いたことないけど、会うことってできるの?」

アーサー:
「勿論。ただ、一番先に会わせたいランスロットから、何の音沙汰もなくなってしまって」

ブリジット:
「そうなんだ。ランスロットがリーダー?」

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アーサー:
「円卓の騎士にはリーダーはいないけど、事実上の取りまとめ役と言えるな。
何でもできるんだ。
特にフェンシングをやらせると超一流だよ。射撃の能力も機械みたいに正確だって聞いた。
絶対勝てない。その前に戦いたくないけどな」

ブリジット:
「ふーん。そんな人が市民に紛れてるのね……。
もしかしたら今まで道ですれ違ったこと、あったりして」

アーサー:
「そうかもな。多分ランスロットはもうブリジットのことは知っていると思う。
……いくら忙しいと言っても、結婚するとなると必ず何か言ってくるとは思ったんだけど……。
俺がこんな感じだから、愛想が尽きたのかもしれない」

ブリジット:
「どうしてそう思うの?アーサーは最高の王様でしょ。
他の騎士が皆そう思っているのなら、ランスロットだってそう思ってるはずよ」

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アーサー:
「どうだろうな。俺、今までランスロットから逃げていたんだ」

ブリジット:
「逃げる?どうして?」

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アーサー:
「昔からちょっと苦手だった。何というか……。
すごく期待を受ける感じと言ったら良いのか、崇拝されると言うのか……。
何か言うと『仰せのままに』と返される。あの感じが耐えられなかった。
オアシス・スプリングスを離れて楽しく暮らしているのに、
あの声を聞くと途端にベラミー家の人間として引き戻される」

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「でも変だな。あんなに逃げ回っていたのに、とても会いたいんだ」

ブリジット:
「今まで連絡が来ていたんでしょ。
それが突然プツンと途絶えるなんて、誰だって心配するよ。
連絡が来なくなってどのくらい経つの?」

アーサー:
「もう3年ぐらいになるかな……。
他の皆に聞いても何だか話をそらされてるような気がする。
誰も教えてくれないんだ」

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ブリジット:
「じゃあ聞き出さなくちゃね。それとも秘密の特訓でもしてるのかな。
アーサーに逃げられない方法とか。ふふ。
今会えないって言われると、かえって余計に会いたくなっちゃうなあ」

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アーサー:
「(ランスロット……。
俺がお前の望むような王になるのなら、また会えるのか?
でも俺は……)」

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「……さて、ブリジット。ここから先なんだけど……。
靴は脱いで、裸足でなくちゃいけないんだ」

ブリジット:
「いよいよね」

アーサー:
「下が土だから、足が汚れるんだけど」

ブリジット:
「大丈夫。全然気にしない。
……でも神殿って言っても、普通はアーサーとお義父様以外は入れないんでしょ。
それも、一度にどちらかしか」

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アーサー:
「!!何で分かったんだ?」

ブリジット:
「この部屋には円卓の騎士12人。
この先に進めるのは13人目の王だけってことかなって、
直感でそう思ったのよ。
『私たちはここでお待ちしておりますので王はお祈りを』、みたいなね」

アーサー:
「はあ……」

ブリジット:
「だから私が入っちゃいけないんじゃないのかな」

アーサー:
「いや、良いよ。ブリジットを案内するために来たんだから。
と言うか、いてもらわないと困る。さあ、行こう」

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「手すりがないから、足元に気を付けて……」

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ブリジット:
「…………ここが……」

アーサー:
「『神の間』だ。
何もなくて、がっかりしただろ?あるのは噴水だけだ」

2017-04-23_10-37-20.jpg

ブリジット:
「ううん、全然がっかりなんてしてない。興味津々よ……。
あそこがお祈りの場所?」

アーサー:
「ああ」

ブリジット:
「……確かにここは何かがいるような感じがする。何かの視線を感じる」

アーサー:
「し、視線だって……!?」

ブリジット:
「うん。もう、ビシビシとね。
まるで私がアーサーの結婚相手に相応しいかどうか、
審判にでもかけられているみたい。
背筋を正して、神様にご挨拶しなきゃね」

アーサー:
「ブリジット、待ってくれ。挨拶したら君はもう後戻りできない」

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ブリジット:
「後戻り?」

アーサー:
「つまりその……本当に良いんだよな。後悔しない?」

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ブリジット:
「もう、アーサー」

アーサー:
「ごめん」

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ブリジット:
「……ねえ、ベラミー家へ嫁いだ女性たちは皆ここにやって来たのよね。
ここで愛を誓い合った。そう考えると歴史って不思議だし、面白いね。
私たちの後もこうやって末永く続いていきますように。
中世に生きた恋人たちも、きっと同じことを考えていたんだろうね」

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アーサー:
「そうだな。ここは祈りの場でもあり、誓いの場でもある。
家の繁栄を願って……」

ブリジット:
「かの仁君『アーサー王』もここにいたのね……」

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アーサー:
「……仁君?あれは仁君じゃない。暴君だ」

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ブリジット:
「え、そう?市民の声をよく聞いて政治を動かし善政を敷いた人……って有名でしょ。
ベラミー家っていうと、このアーサー王が真っ先に浮かぶよ」

2017-05-13_19-32-22.jpg

アーサー:
「でも市民を大量虐殺した。当時の魔女狩りに拍車をかけてしまった。
自分が子どもに恵まれなかったといって、八つ当たりに……。
やっと生まれた男の子もすぐ死んでしまったから、シェリンガム家を魔女扱いにして滅ぼした。
この辺りは教科書でも『一瞬』だろ。
だからそんなに知られていないし、取り上げている本もあるけど少数だし、
『異端』扱いだ」

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「俺、そんな人と名前が一緒なんだ。どうしてだろうな。
何でこの名前を付けられたんだろう……いつも祈るたびに思うよ」

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ブリジット:
「……」

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アーサー:
「紅茶を飲みながら笑って死体を眺めてる。
絶対高貴なんかじゃない。貴族でもない。
剣を振りかざして、歯向かう者はことごとく命を奪ってしまう。
しかもそれが正義だと信じられている。
どんなに時が経とうが、流れる血は同じだ。血は争えない。
だから今もランスロットたちのような人間を作ってしまう」

ブリジット:
「……」

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アーサー:
「特にランスロットは……」

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「俺たちのせいで笑うことができない人間になってしまった。
それを見ると……」

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ブリジット:
「それだけ真剣なんだよ。それに、笑いながら護られるのも嫌じゃない?」

アーサー:
「……それは……そうか?」

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ブリジット:
「でもアーサーは笑って」

アーサー:
「……ブリジット。俺、ブリジットをこんな家柄の人間にしてしまうのは嫌だ。
なのに」

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「……嬉しいんだ。ブリジットがベラミー家に入るのがとても嬉しいんだ。
一緒になれることが嬉しいんだよ」

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ブリジット:
「……うん。
私も、嬉しいよ。アーサーと結婚できること」

アーサー:
「…………」

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ブリジット:
「アーサー。泣いてる?」

アーサー:
「……。さあ、神様に挨拶しよう。早くしろって怒られないうちに」

ブリジット:
「ふふ。うん」

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アーサー:
「……地に眠りし我らが神よ」

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「……我が最愛の伴侶を護り給え……」

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イアン:
「……独身最後の釣りかな?」

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アーサー:
「……へっ?あ、ああ、ごめんイアン。ぼーっとしてて……」

イアン:
「おや。幸せな妄想にでも浸ってた?花婿さん。今日はこれから例の……。
僕ら3人のスタッグパーティーだろ。のんびり釣りしてる場合?」

アーサー:
「いや、この後二日酔いになる前に、釣り納めしておこうと思ってさ」

イアン:
「フフフ、そうだね。ジェイコブに飲まされる前に、堪能しておいた方が良いよ。
どう、釣れてる?」

アーサー:
「……ご覧の通り、全く」

イアン:
「ハハ。君、釣りが好きなんだ?キャンプの時も釣りしてたよね」

アーサー:
「ああ。下手の横好きだけどな」

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イアン:
「釣り好きな人って、やっぱり大きなものを釣り上げてみたいものなの?」

アーサー:
「いや、俺はそういうのはあまり」

イアン:
「へえ。そういうもんなんだ」

アーサー:
「そりゃあ、いつかは大きな魚を釣り上げてみたいけど……。
別に釣れなくても、ただ水面を眺めているだけで良いんだ。
魚がすいすいと楽しそうに泳いでいるのを見ると、自分まで楽しくなってくる」

イアン:
「なるほどね。君ってつくづく無欲な人だな」

アーサー:
「……イアン。もしかして、父さんたちから何か頼まれた?
だからここに来たのか?」

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イアン:
「何かって、どういうこと?」

アーサー:
「…………」

イアン:
「ああ、話ができすぎてるってこと?本当に偶然だったんだ。
引っ越し先に息子さんである君がいるなんて思いもよらなかった」

アーサー:
「『偶然』で、このシェアハウスに?イアンならもっと……」

イアン:
「僕は砂漠で水を探し求める旅人だった」

アーサー:
「……?」

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イアン:
「最初に話しただろ。栄光の影で、すっかり自分の方向性を見失ってしまってね。
君の家でお世話になっている間……ここに来る少し前だ。
僕は画家として、久しぶりに心が動かされる絵に出会ったんだ。
それも……これも偶然だよね、その絵と出会った場所はブリジットが働いていたカフェだった!
今から考えたら、まさに神の御導きだ。
僕はその描いた人を探しに来た。君のご両親にもご協力頂いて、見つけることができたんだよ。
あの時ブリジットにもっと詳しく聞いた方が良かったみたいだけど。フフフ」

アーサー:
「ま、まさか……アリシアのことか?」

イアン:
「そう。彼女には内緒だよ。
……何でそんな顔をしているんだ?
アリシアは良い画家になるよ。本人にその気が起きてないだけでね」

アーサー:
「(豪邸よりもアリシア?)」

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イアン:
「その顔。まだ疑ってる?じゃあ、アーサー。君にも同じ質問をしたいな。
何故このシェアハウスにいるんだい?君の方が僕には不思議だ。
きっと根本的には、僕と同じことなんじゃないかな」

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「……さ、行こうよ、アーサー。ジェイコブが待ってる」

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